歯科助手_スキルアップ

歯科医師や歯科衛生士をサポートする歯科助手は、歯科医院を運営するうえで必要な人材です。無資格の歯科助手だかこそ、最初は知識やスキルを身に着けていないケースでも、将来の活躍を見込んで採用することはあるでしょう。

その分、歯科助手のスキルアップを実現させることは、歯科医院にとって医療サービスの向上にもつながる重要な課題です。この記事では、歯科医院が歯科助手のスキルアップに取り組むメリットを解説し、その方法について紹介していきます。

歯科助手とは?歯科医師・歯科衛生士との関わり方について解説

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(画像=pixta)

歯科医院には、欠かせない「歯科助手」。

歯科衛生士と違い、国家資格が必要な訳ではないので簡単にできる、と思われがちですが、実際は学ぶべき技術の多い専門職です。

歯科助手は無資格でも仕事に就ける、また勤務時間の融通もききやすいことから勤務を希望する応募者が多く、非常に人気のある仕事です。

仕事の内容は、受付や会計、また治療をする歯科医師や歯科衛生士のアシスタントが主な仕事です。

無資格のため医療行為はできませんが、治療器具の管理や掃除、また中には資格を取ってレセプトの作成を行う人もいます。

このように歯科助手の業務範囲は大変多岐にわたるので、年齢や経験を重ねるとさらに活躍できるのも魅力です。

歯科医院が歯科助手のスキルアップに取り組むメリット

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(画像=taka/stock.adobe.com)

「歯科助手のスキルアップが重要だということは分かっているものの、スキルアップに取り組むことでどのような効果があるのか分からない」という歯科医院の先生も多いのではないでしょうか。

歯科助手は国家資格でもなければ採用時に経験を問わないことも多いので、「歯科のことは全く分からない」というスタッフも当然たくさん存在します。

未経験、あるいは経験不足な歯科助手をスキルアップさせることは、長期的な歯科医院運営を考えた時、大きなメリットをもたらします。

歯科医院が歯科助手のスキルアップに取り組む2つのメリットについて説明しましょう。

歯科助手スキルアップのメリット1.優秀な人材の確保

歯科助手は、資格を必要としないことから医療行為は行えませんが、歯科医師や歯科衛生士のアシスタント、受付・会計、レセプト作成などの幅広い業務を担当します。

しかし、業務内容が限られるため、やりがいを感じにくいという課題が考えられるうえ、受付業務などは一般企業でも募集していることから、人材の獲得競争にもなりやすい職種です。

歯科医院として歯科助手のスキルアップに熱心であれば、成長意欲が高く、キャリアアップを目指している歯科助手のつなぎ止めにもなります。

相談しやすくしっかり自分で学ぶことができるクリニックであると感じたら、安心して勤務を続けることができるでしょう。

また、女性は、ライフステージの変化に合った働き方が必要なこともあり、スキルや経験を身に着けて働きたいと考える人も少なくありません。

「しっかりスキルアップできるよ」という特徴があれば採用という点でも、成長志向の高い人材へのアピールになるはずです。

歯科助手スキルアップのメリット2.治療・業務の品質・スピードアップ

歯科医院経営で必要なのは、医療資格だけではありません。

患者さんとの接点が一番多い歯科助手のスキルが向上することで、治療や患者サービスにおける質がアップし、他院との差別化を図るきっかけになるでしょう。

以下は歯科助手のスキルアップの成功例です。

・【カウンセリング能力を高める】
→患者の不安・ニーズを吸い上げ、自由診療につながる ・【治療サポートや事務処理などがスピードアップ】
→院内オペレーションの効率化を実現

歯科助手の成長は、モチベーションアップにもつながり、本人にとっても歯科医院全体にとっても好影響を与えます。

歯科助手の主な業務内容と必要なスキル

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(画像=pixta)

歯科医院の院長が歯科助手のスキルアップに取り組む際は、「自院における歯科助手の業務内容」、さらには「必要なスキル」を改めて洗い出しておくと、教育方針が固まり、効果も出やすくなります。

ここでは歯科助手の業務内容と、必要スキルをおさらいしていきましょう。

入社1ヶ月から3ヶ月

歯科助手は国家資格ではないため、初めは誰もが完全な未経験です。

また、歯科業界が初めてという人も多いので、入社から最初の数ヶ月は、1日の大半がひたすらインプットの期間となります。

まずは歯科医院で患者さんが来院してから会計を終えて帰るまでの流れや、一般的な歯科用語や歯科医院独自のルールをなど、学ぶことがたくさんあります。

最初は何もわからなくて当然なので、技術のこと、歯科業界のことなど、積極的に相談しましょう。

入社3ヶ月から半年

この頃になると一通りの治療の流れや機器なども覚えて、歯科医師や歯科衛生士のアシスタントとしての仕事も始まります。

最初のうちは先生が指示している内容がわからなかったり、機器の名前を覚えていなかったりということもあるでしょう。

しかし覚えるべきことは1日でも早く覚えて、歯科医師や歯科衛生士の右腕となることが期待されます。

入社から半年以降

入社から半年以上が経つと、初めて歯科医院で働いたという人もかなりちしきが増えているでしょう。

歯科医師や歯科衛生士にとってかゆいところに手が届くアシスタントになることを目指しましょう。

歯科助手の業務内容1.受付・会計業務

来院した患者の対応は、主に歯科助手の仕事です。

受付業務では、診察券や保険証を確認し、新患であれば問診票への記入依頼・カルテ作成を行います。

診察後には診療費の計算・診療費の受領を行い、次回診察の予約・スケジュール管理・電話やWebによる問い合わせも担当するです。

基本的なPCスキルや接遇力、コミュニケーションスキルなどが必要とされます。

歯科助手の業務内容2.患者の案内・介助

診察前後のサポートも歯科助手の担当であり、診察するユニットまでの案内やエプロンの装着が含まれます。

さらに高齢者や車椅子、体の不自由な患者の介助も業務内容の1つです。

ユニットへ移乗する際の手伝いや、会計時の介

また、キッズスペースが完備されている歯科医院では、遊具などの清掃や管理を行う場合があります。

歯科助手の業務内容3.治療器具の管理

治療の準備や片付けでは診療の流れを理解し、正確かつ迅速な判断が必要です。

まず、治療前に紙コップやエプロン、治療に使用する器具などを準備します。

用意する器具はある程度決められているので、しっかりと把握することが重要です。

治療後には椅子やユニット内に汚れがないかチェックし、器具の洗浄・滅菌処理・片付けを行います。

患者の血液が付着している場合もあるため、特に注意が必要な作業です。

歯科助手の業務内容4.治療の補助

患者の口内に手を入れることは医療行為にあたるためできませんが、歯科医師や歯科衛生士のアシスタント業務は可能です。

待ち時間の説明、治療中のバキューム作業、歯科医師に器具を渡すといった医療行為にならない範囲でサポートします。

治療に使用する器具の名称や用途、歯科に関する知識があれば、スムーズに作業が進められますし、コミュニケーションスキルも必要な業務です。

歯科助手の業務内容5.レセプトの作成

レセプト業務とは「診療報酬明細書」を作成する作業です。

一般的に医療費の3割を患者が負担し、残り7割を組合健保や協会けんぽ、市区町村など健康保険の保険者が負担するため、保険者に診療報酬の請求を行います。

毎月集計し、支払機関へ提出を行ことから正確性が求められるうえ、専門的な知識が必要なため、有資格者が担当するケースが多く見られます。

歯科助手をスキルアップさせる4つの方法・おすすめの資格

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(画像=こうまる/stock.adobe.com)

歯科助手のスキルアップは、院内での指導や研修・セミナーへの参加が主な方法となります。

しかし、スキルアップの場を提供するだけでなく、スキルアップした後の環境整備も大切です。

ここでは、スキルアップの方法と整備したい院内制度について解説します。

歯科助手スキルアップの方法1.OJTの充実

歯科助手は、歯科医師や歯科衛生士のような国家資格が不要なため、基本的には現場で働きながら仕事を覚えていくことが一般的です。

特に新人の指導はOJT中心となりますが、ミーティング、課題設定・フィードバックを定期的に行うなど、やり方次第で高い教育効果が見込めます。

OJTでは知識だけでなく実践的なスキルを学べ、その場でフィードバックを受けられるメリットがあるほか、スタッフとの人間関係の構築にもつながり、教える側も業務の理解度や指導力の向上が望めるでしょう。

歯科助手スキルアップの方法2.研修・セミナーの導入

院内での勉強会や接遇研修など、特定のテーマを設定した研修の実施もおすすめです。

例えば、外部講師を招いて接遇やコミュニケーションに関する研修を開催するのはいかがでしょうか。

受付などで患者に接する機会が多い歯科助手だからこそ、接遇やコミュニケーションスキルを磨くことは非常に役立ちます。

また、技術面なら「バキュームテクニック」のような治療をテーマにセミナーを実施するのも有効です。

歯科助手スキルアップの方法3.人事評価制度の整備

成長意欲が高く、実際にスキルアップしている歯科助手については、頑張りや能力を正しく評価する仕組み作りが必要です。

人事評価には公平性と透明性が求められるため、目標レベルや評価項目を明確、かつ分かりやすく設定しなければなりません。

適切に評価することで本人のモチベーションも高まり、さらに成長意欲を引き出すことにもつながります。

さらに、レベルに応じた昇給、院内スタッフの投票による院内表彰なども行うと、スタッフのモチベーション維持に効果的です。

レベルに応じた昇給、スタッフの投票による院内表彰なども効果的です。

さらに、「これができるとどうなる」「次のステップはこうなる」といった院内でのキャリア指南や、キャリアパスを示すことも歯科助手のモチベーションに影響します。

歯科助手スキルアップの方法4.資格取得の奨励・手当の支給

歯科助手に国家資格はありませんが、民間資格がいくつか存在します。

医院として資格取得を奨励し、資格手当を支給するのも1つの方法です。

求人を掲載する時にも、資格支援制度があれば自院のアピールにつながります。いくつかの資格を紹介しましょう。

  • 公益社団法人日本歯科医師会 歯科助手資格(甲種/乙種第一/乙種第二)
  • 全国医療福祉教育協会 歯科助手専門員
  • 技能認定振興協会 医療事務管理士(歯科)

この他にも歯科医療事務に特化した検定などがあります。

日本歯科医師会が制定する「歯科助手資格」については、各都道府県歯科医師会で講習を受ける必要がありますが、多くは在宅受験が一般的であるため、歯科助手として仕事をしながらのスキルアップが可能です。

■歯科助手資格
歯科助手資格は、日本歯科医師会が定める基準を満たすことを認定する資格です。

レベルに応じて3つの資格が認定され、歯科助手全般のスキル獲得に役立ちます。

  • 乙種第二:主に事務的な業務を行い、40時間の講習を修了した者に認定
  • 乙種第一:主に診療室内の業務を行い、52時間以上の講習を修了した者に認定
  • 甲種:420時間以上の甲種歯科助手訓練基準の訓練を修了した者に認定。ただし、乙種第一歯科助手の資格を保持し、業務経験が3年以上、補充研修訓練基準による訓練が必要

■歯科助手専門員
歯科助手専門員は、全国医療福祉教育協会が認定する資格です。

通信講座を受講し、カリキュラムや課題をクリアすることで取得できます。

歯科助手の技能習得に重点が置かれており、事務的な業務からアシスタント業務までをDVDなどで分かりやすく解説しているため、歯科助手に必要な知識を効率的に習得できます。

■医療事務管理士(歯科)
技能認定振興協会主催の医療事務管理士は、医療事務の専門家としてスキルを証明する資格です。

日本初の医療事務資格として知られ、受付・会計業務やレセプト業務、カルテ管理などに関する知識を習得できます。

受験資格は特になく、インターネットによる在宅試験が行われ、実際にレセプトを作成する実技試験も含まれます。

■歯科アシスタント
全国医療技能検定協議会が主催する歯科アシスタントは、事務業務からアシスタント業務まで歯科助手に必要なスキルを認定する資格です。

受験資格はなく、3つの等級に分かれています。

3級:歯科診療補助、歯科診療概論 2級:歯科診療補助、歯科臨床概論、口腔衛生 1級:歯科診療補助、解剖・生理学、歯科臨床概論、薬学、栄養、口腔衛生

■歯科助手技能認定
日本医療教育財団が主催する歯科助手技能認定は、歯科助手業務のレベルを評価・認定し、スキルアップや育成を目的とした認定資格です。

試験は「歯科助手技能認定申請資格に関する教育訓練ガイドライン」に基づいており、さまざまな分野から出題されます。

受付業務から診療介助、医療機器の管理まで幅広い知識を得られる資格です。

■トリートメントコーディネーター
トリートメントコーディネーターは、歯科医師と患者との間で満足のいく治療を進めるための調整役であり、日本歯科TC協会が主催する認定試験に合格することで取得できます。

歯科治療に関する知識のほか、コミュニケーションスキルやプレゼンテーションスキルなどが身につきます。

4つのクラスに分かれ、「Activity Leader」からステップアップを目指します。

■歯並びコーディネーター
歯並びコーディネーターは歯科矯正についての知識を身につけ、アドバイザーを育成するための制度で、日本成人矯正歯科学会が主催しています。

歯並びの基礎や矯正に関する知識が得られ、受験資格は特にありません。

5時間程度の研修会に参加後、研修内容から出題される試験に合格すると認定登録されます。

■デンタルカウンセラー
デンタルカウンセラーは、患者とのコミュニケーションに生かせるスキル「コーチング・聴く力・ティーチング」を習得する資格です。

株式会社オフィスウェーブが主催し、講座を受講することで実践的なスキルが身につきます。

患者へのカウンセリングだけでなく、院長や院内スタッフとのコミュニケーションにも役立ちます。

まとめ

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(画像=naka/stock.adobe.com)

歯科助手のスキルアップは、医療サービスの質を向上させるだけでなく、長期的な雇用を実現するうえでも検討したい取り組みです。医療とは関係のないスキルに感じられても、患者の満足度や業務の効率化につながれば、歯科医院経営には大きな貢献となるのではないでしょうか。

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あきばれ歯科経営 online編集部

歯科衛生士でもある「あきばれホームページ」歯科事業部長の長谷川愛が編集長を務める歯科医院経営情報サイト「あきばれ歯科経営 online」編集部。臨床経験もある歯科医師含めたメンバーで編集部を構成。

2021年5月14日「あきばれ歯科経営 online」正式リリース。全国1,100以上提供している「あきばれホームページ歯科パック」による歯科医院サイト制作・集客のノウハウを元に、歯科医院経営を中心とした歯科医院に関する様々な情報を経営に役立つ観点からお届けする。